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高口蓋とは?赤ちゃんの上顎のへこみ吸啜窩(きゅうてつか)の役割と1歳過ぎても消えないリスク

今「赤ちゃんの口の中を覗いたら、上顎の真ん中あたりに小さなへこみがある…これって何かの異常?」
「母乳を飲むときに空気が入りやすい気がする。上顎の形が原因?」

初めての育児において、お子様の身体に現れる「大人の身体とは違う特徴」は、時に大きな不安の種となります。特に、お口の中は直接見えにくい場所だからこそ、ふとした瞬間に見つけた「くぼみ」を心配される親御様は非常に多いです。

実は、このくぼみには「吸啜窩(きゅうてつか)」という名前があり、赤ちゃんが生きていくために欠かせない、極めて重要な役割を持っています。しかし、同時にこのくぼみの変化は、将来の「歯並び」「噛み合わせ」、さらには「鼻呼吸」がスムーズにできるかどうかのSOSサインを親御様に教えてくれる場所でもあります。

本記事では、小児歯科の専門的な知見から、吸啜窩の役割と消失のメカニズム、そして「消えない場合」のリスクと家庭でできるトレーニングについて、1万文字を超える徹底解説をお届けします。

目次

赤ちゃんの口にある「くぼみ」の正体=吸啜窩(きゅうてつか)とは

まず結論から申し上げます。生まれたばかりの赤ちゃんの上顎(口蓋)の奥にある小さなくぼみは、病気や畸形ではありません。むしろ、これがないと赤ちゃんはお腹いっぱいミルクを飲むことができない、いわば「哺乳のための精密な設計」の一部です。

哺乳を成功させるための「命のポケット」

赤ちゃんは、大人のようにストローを使ったりコップからゴクゴク飲んだりすることはできません。授乳の際、赤ちゃんはお母さんの乳首(または哺乳瓶のニップル)を口に含み、以下の3つの動作を同時に、かつリズミカルに行います。

  1. 吸着(きゅうちゃく): 唇を外側に開き、乳輪まで深くくわえて密閉する。
  2. 吸啜(きゅうてつ): 舌を波打つように動かし(蠕動運動)、乳首を上顎に押し当てて搾り出す。
  3. 嚥下(えんげ): 搾り出した母乳を喉へと流し込み、飲み込む。

この「吸啜」の動作において、上顎が真っ平らだと、丸みを帯びた乳首が左右に逃げてしまい、安定して圧力をかけることができません。そこで役立つのが吸啜窩です。乳首の先端がこのくぼみにすっぽりと収まることで、舌の力が効率的に乳首に伝わり、強い陰圧(吸い込む力)を生み出すことができるのです。

【専門的な補足:吸啜反射のメカニズム】
赤ちゃんには、口の中に物が入ると無意識に吸い付く「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」が備わっています。この反射は、胎生28週頃から始まり、生後4〜7ヶ月頃に消失して、自分の意志で食べる動きへと移行します。吸啜窩はこの原始反射とともに完成される、乳児期限定の解剖学的特徴なのです。

あごの隙間「顎間空隙」との絶妙なコンビネーション

吸啜窩とセットで観察してほしいのが、上下のあご(歯ぐき)が完全には閉じず、前方に隙間があることです。これを「顎間空隙(がくかんくうげき)」と呼びます。

この隙間があるおかげで、赤ちゃんは乳首を噛み潰してしまうことなく、舌を前後に大きく滑らせることができます。もし、生まれた時から上下の歯ぐきがピッタリ合わさっていたら、おっぱいはうまく吸えません。吸啜窩(高さの確保)と顎間空隙(前後の通り道の確保)という二つの構造が、赤ちゃんの「飲む力」を支えているのです。

お口の中が「吸う」から「噛む」へ劇的に進化するプロセス

「おっぱいを飲むための機能」である吸啜窩は、離乳が進むにつれて役目を終えます。正常な発達においては、生後5ヶ月頃から始まり、1歳を過ぎる頃には自然に浅くなり、消失していきます。この消失のプロセスこそが、お口の「筋力アップ」の証拠です。

離乳食は単なる栄養補給ではなく「お口の筋トレ」

離乳食が始まると、赤ちゃんのお口は「吸い込む」動きから「押しつぶす・すりつぶす」動きへとシフトします。

ステップ①:自食期(0〜5ヶ月)=母乳・ミルクを力強く「吸う」
この時期の主役は、舌の「波打つ動き(蠕動運動)」です。乳首を上顎に押し当てて、舌全体を使ってミルクを搾り出します。この「吸う」動きが、顎の筋肉(咬筋や口輪筋)の最初のトレーニングになります。母乳での授乳は、哺乳瓶よりも大きな力が必要なため、顎の発育には理想的と言われますが、最近は母乳に近い抵抗感を持つ哺乳瓶のニップルも開発されています。

ステップ②:離乳初期〜中期(ゴックン期・モグモグ期)=舌を「上下」に動かす
食べ物を舌の先から奥へと運び、飲み込む練習をします。この時、舌が上顎をしっかりと押し上げるようになります。この「舌を天井に押し当てる力」こそが、吸啜窩(きゅうてつか)という窪みを内側から押し戻し、平らな高い天井(高口蓋)になるのを防ぐキーポイントです。

ステップ③:離乳後期〜完了期(カミカミ期)=「前歯」でかじり取り、「奥歯(歯ぐき)」ですり潰す
咀嚼(そしゃく)の始まりです。歯ぐきや生え始めた歯で噛むようになり、顎の骨(上顎骨・下顎骨)そのものが活発に発育を始めます。この時期に「手づかみ食べ」をさせ、自分の前歯で「かじり取る」経験を積むことで、顎はさらに横へと広がっていきます。

なぜ「噛まない子」が増えているのか?食習慣の盲点

現代の食事は、離乳食から完了期、さらには幼児期の食事に至るまで「柔らかすぎる」傾向があります。野菜をクタクタに煮込む、細かく刻みすぎる、といった親心の配慮が、皮肉にも「顎を育てる機会」を奪っているケースがあります。

吸啜窩が消えない子どもの多くに共通するのが「丸飲み」です。噛まずに飲み込んでしまうと、舌の筋肉が鍛えられず、いつまでも赤ちゃんの「飲み込むパターン(乳児嚥下)」から抜け出せません。一口の量をやや多めにし、前歯でしっかり噛まなければいけない「繊維のある食材」を段階的に取り入れることが、吸啜窩の消失を助け、綺麗な歯並びへの近道となります。

上顎の成長を促す「かじり取り」と食育の重要性

吸啜窩を消失させ、あごを広げるために最も効果的な食事の動作は「かじり取り」です。一口大の食べ物を口に入れるのではなく、少し大きめの食べ物をご自身の前歯で噛み切る動作をさせてください。この時、前歯の根元にある感覚受容器が刺激され、脳にあごの成長を促す信号が送られます。

  • 高口蓋(こうこうがい): 上あごの天井が深く掘り込まれ、狭くなっている状態。吸啜窩が消えないとここに至ります。
  • 低位舌(ていいぜつ): 舌が本来あるべき「上あご」ではなく、下に落ちている状態。あごの発育を妨げる最大の原因です。
  • 舌小帯(ぜつしょうたい): 舌の裏にあるヒモ状の組織。これが短いと滑舌やあごの成長に悪影響を与えます。
  • 口唇閉鎖不全(こうしんへいさふぜん): 常に口が開いている(お口ポカン)の状態。歯並びに悪影響を及ぼします。
  • MFT(口腔筋機能療法): お口の周りの筋肉のバランスを整える訓練のこと。矯正治療を成功させる上でも欠かせないプログラムです。
  • 口蓋骨(こうがいこつ): 上あごを構成する骨。赤ちゃんの時期は非常に柔らかく、舌の圧力で形が変わりやすいのが特徴です。
  • 鼻腔(びくう): 鼻の奥の通り道。高口蓋はこのスペースを物理的に狭くしてしまいます。
  • 咀嚼能率(そしゃくのうりつ): 食べ物をどれだけ効率よく噛み砕けるかの指標。幼少期のあごの成長が、一生の能率を左右します。
  • 口腔乾燥(ドライマウス): 口呼吸によって口の中が乾くこと。虫歯や口臭、風邪のリスクを跳ね上げます。

【おすすめの「あご育て」食材リスト】

  • スティック野菜(茹で): ニンジンや大根を少し歯ごたえが残る程度に茹で、手で持ってかじり取らせます。
  • 厚切りトースト: パンの耳など、少し弾力のある部分を噛むことで顎の力が鍛えられます。
  • 骨付き肉(1歳過ぎから): 手で持ってかじる動作は、原始的な顎の発達を強力に促します。

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要注意!吸啜窩が1歳を過ぎても「消えない」理由と隠れたリスク

本来、1歳から1歳半頃には跡形もなく消えるはずの吸啜窩が、くっきりと深く残っている場合があります。歯科用語でこの状態が続くことを「高口蓋(こうこうがい)」と呼びます。単なる「個性」と思われがちですが、実は深刻なサインである可能性が高いのです。

舌小帯強直症(ぜつしょうたいきょうちょくしょう)の影響

吸啜窩が消えない「解剖学的な理由」として、舌の下にあるヒモ(舌小帯)が短い「舌小帯強直症」が隠れている場合があります。

舌のヒモが短いと、舌を上に持ち上げることが困難になります。どんなに離乳食で特訓しても、物理的に舌が上顎に届かなければ、吸啜窩を押し戻す圧力がかかりません。もしお子様が「舌をベーと出した時に先がハート型になる」「口を大きく開けて舌を上に上げられない」といった特徴がある場合は、早

適切な時期に小手術やトレーニングを行うことで、あごの正常な発育を取り戻すことが可能です。手術といっても、現代の歯科医療ではレーザー等を使用し、出血や痛みを最小限に抑え、短時間で終わるものが主流です。「うちの子、舌が短いかも?」と思ったら、まずはカウンセリングだけでも受けてみてください。

【実例紹介】吸啜窩が消え、劇的に変わったAくんの事例

3歳児検診で見つかった高口蓋(吸啜窩の残存)

初診時、3歳のAくんは「サ行」が聞き取りづらく、常に口が開いている状態でした。上顎には深い吸啜窩が残っており、V字型の狭いアーチになっていました。

行ったアプローチ:

  • 大好きなストロー飲みを卒業し、コップ飲みに完全移行。
  • お風呂の時間に「ぶくぶくうがい」と「にらめっこ」遊びを毎日5分。
  • 食事の際、本人の足がしっかりつく踏み台を設置。

1年後の変化:

舌の筋力がついたことで、上顎のアーチが横に広がり、吸啜窩はほぼ消失しました。滑舌も驚くほど明瞭になり、何より「鼻呼吸」ができるようになったことで、風邪を引く頻度が劇的に減ったとお母様も喜んでおられました。

最大の原因は「舌の位置の異常(低位舌)」

吸啜窩が消えない最大の理由は、舌が上顎を十分に押していないことにあります。本来、口を閉じている時、舌の先は上の前歯の付け根あたり(スポット)にあり、舌全体が上顎にピタッと吸い付いているのが正しい状態です。

しかし、何らかの理由で舌が下あごの方に落ちている状態を「低位舌(ていいぜつ)」と呼びます。

  • 口呼吸の癖: 鼻が詰まっていると口で息をするため、口が開き、舌が下がります。
  • お口ポカン: 口の周りの筋肉(口輪筋)が弱いと、あごが下がり、舌も連動して下がります。

舌という「内側からの矯正装置」が働かないまま成長すると、上顎は外側からの頬の筋肉の圧迫に負けてしまい、狭く、高く、尖った形状になってしまいます。

長期化する「指しゃぶり」や「おしゃぶり」の影響

指を吸う動作は、吸啜窩を物理的に深く掘り込んでしまいます。2歳頃までの指しゃぶりは発達過程として見守りますが、3歳を過ぎても強く吸い続けていると、上顎の骨が指の形に変形してしまい、吸啜窩が固定化される原因となります。

【歯科医師の視点:おしゃぶりの功罪】
おしゃぶりは泣き止ませには効果的ですが、長期使用は「お口を閉じる力」の育成を妨げ、吸啜窩の消失を遅らせます。1歳を過ぎたら、徐々におもちゃや手遊びに移行することを検討しましょう。

「高口蓋」が招く悲劇|歯並び悪化とアデノイド顔貌、鼻づまりの連鎖

吸啜窩が残ったまま「高口蓋」になると、単に「見た目が違う」だけでは済まない全身へのリスクが生じます。

① 歯並びのガタガタ(叢生・出っ歯)

上顎が横に広がらないということは、永久歯が並ぶための「土地(スペース)」が足りないということです。その結果、歯が重なって生える(叢生)や、狭いスペースから歯が押し出される「出っ歯」になりやすくなります。また、上下のあごが噛み合わなくなる「開咬(かいこう)」の原因にもなります。

② 鼻呼吸ができなくなる(悪循環の完成)

非常に重要な事実として、「上顎の天井は、鼻の通り道(鼻腔)の床である」という点があります。上顎の天井が高くなる(高口蓋)と、その分、鼻腔のスペースが圧迫されて狭くなります。

あごの形は、単なる「入れ物」ではありません。空気の通り道、すなわち「命のインフラ」そのものです。高口蓋による鼻腔の狭窄は、生涯にわたる健康リスクを抱え込ませる可能性があります。

睡眠の質が脳を育てる!お口の形と「成績」の意外な相関

近年の研究では、お口の機能発達(呼吸)と子どもの学習能力に関連があることが示唆されています。鼻呼吸がスムーズにできない子どもは、睡眠中に脳に十分な酸素が行き届かず、深い眠りが阻害されます。その結果、日中の集中力が削がれ、イライラしやすくなったり、学習効率が低下したりすることがあります。

吸啜窩が残り、高口蓋のまま成長することは、将来の「学力」や「情緒の安定」にも影を落とす可能性があるのです。小児歯科でのあごのトレーニングは、単なる美容のためではなく、お子様のポテンシャルを最大限に引き出すための「教育的な投資」とも言えるでしょう。

「サ行」がうまく言えない?滑舌と上あごの意外な関係

言葉を覚える時期のお子様で、「サ行」や「タ行」の滑舌が悪い(不明瞭な発音)場合、それも吸啜窩や高口蓋が原因かもしれません。私たちは舌を上顎に打ちつけることで特定の音を出しますが、上顎の天井が高すぎたり狭すぎたりすると、舌が正しい位置に届かず、空気が漏れてしまいます。

「大きくなれば自然に治る」と言われがちですが、根本的なあごの形が整わない限り、間違った舌の使い方が定着してしまいます。綺麗な発音は一生の自信に繋がります。歯科医院でのアプローチは、いわば「物理的な発声トレーニング」でもあるのです。

③ アデノイド顔貌と「鼻閉」の深刻な影響

口呼吸が続くと、表情筋が使われないため、あごが後退し、鼻の下が伸び、目がトロンとした独特の顔つき(アデノイド顔貌)になりやすくなります。また、高口蓋が原因で鼻腔が狭くなると、空気の通りが悪くなる「鼻閉(びへい)」の状態になり、脳への酸素供給が不足して集中力の低下や多動、いびき、さらにはおねしょ(夜尿症)の原因になることも近年の小児科学で指摘されています。

中耳炎を繰り返すのは「上あごの形」のせいかも?

意外に知られていないのが、耳との関係です。上顎の形が異常だと、喉と耳をつなぐ「耳管」の働きが悪くなり、中耳炎を繰り返しやすくなることがあります。お子様が何度も耳鼻科に通っている場合、実はお口の形(高口蓋)が根本的な原因となっているケースも少なくありません。

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0歳から実践!将来の「綺麗な歯並び」を育てるための離乳食と遊びの極意

親御様に知っておいてほしいのは、吸啜窩を消し、健康なあごを育てるために「今からできること」がたくさんあるということです。

① 離乳食の進め方:3つの「べからず」

  • スプーンを奥まで入れすぎない: スプーンは下唇に置くだけにし、赤ちゃんが自分で上唇を使って取り込むのを待ちましょう。これが「唇を閉じる力」を育てます。
  • 柔らかいものばかり与えない: 丸飲み癖がつかないよう、月齢に合わせた適切な硬さの食べ物を、前歯で「かじり取る」経験をたくさんさせてください。
  • 水分で流し込ませない: 噛んでいる最中にお茶や水を与えると、噛まずに飲み込んでしまいます。食事の最後、またはしっかり飲み込んだ後に水分を摂るようにしましょう。

② 「鼻呼吸」を守る寝かせ方と姿勢

授乳中や寝ている時の姿勢も重要です。常に同じ方向を見ていると、あごの成長に偏りが出ることがあります。また、鼻が詰まっている場合は、お部屋の加湿や、必要であれば耳鼻科での処置を早めに行い、「鼻で息をする環境」を死守してください。

お口の機能を育てる「ツール」の選び方

【専門家が推奨する「お口育て」ツール】

  • ストロー付きマグ(スパウトマグ): 唇をしっかり閉じて吸う練習になります。ただし、長期使用は避け、コップ飲みへの移行を促しましょう。
  • 歯固め: 歯が生え始める前から、歯ぐきを刺激し、噛む準備を促します。様々な形状や硬さのものを試して、赤ちゃんのお気に入りを見つけてあげましょう。
  • シリコンスプーン: 離乳食初期に、赤ちゃんの口にフィットしやすく、唇を閉じる練習をサポートします。金属製よりも安全で、歯ぐきへの刺激も優しいです。
  • コップ: 1歳前後から積極的に練習を始めましょう。最初は少量から、親が支えながら少しずつ慣れさせていきます。

③ お口の機能を高める「遊び」

2歳〜3歳頃からは、親子で楽しくお口のトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)を取り入れましょう。

  • シャボン玉・風船: 「吹く力」は、唇を閉じる力(口輪筋)を強力に養います。また、息を吐き続けることは、正しい鼻呼吸への切り替えを促します。
  • にらめっこ・お顔の体操: いろんな表情を作ることで、お口の周りの筋肉だけでなく、表情筋全体が刺激されます。「あー・いー・うー・べー」と大きく口を動かす体操(あいうべ体操のキッズ版)は、舌の位置を改善するのに非常に有効です。
  • うがい・ぶくぶく遊び: 左右の頬を膨らませたり、片方ずつ膨らませたりする「ぶくぶくうがい」は、頬の筋肉(頬筋)を鍛え、歯並びが外側に広がるのをサポートします。
  • ストロー飲み vs コップ飲み: 実は、ストロー飲みは「吸う」動き(赤ちゃんの動き)です。1歳を過ぎたら、少しずつコップで「唇で挟んで飲む」練習を増やしましょう。これにより、吸啜窩と決別するための筋肉が育ちます。

MFT(口腔筋機能療法)の基本ステップ

MFTは、お口周りの筋肉を正しく使えるようにするためのトレーニングです。歯科医院で専門的な指導を受けるのが理想ですが、ご家庭でもできる代表的なトレーニング「ボタン・プル」をご紹介します。

【ボタン・プル運動のやり方】

  1. 大きさ4cm程度のボタンに、強めの糸を通します。
  2. ボタンを前歯と唇の間に挟みます。(歯では噛まず、唇の力だけで支えます)
  3. 親御様が糸を軽く外側へ引っ張ります。お子様はボタンが抜けないように、唇にぐっと力を入れて抵抗します。
  4. これを1日3分程度、遊びの延長で行います。

このトレーニングは「口を閉じる力(口輪筋)」を鍛えるのに非常に効果的で、継続することで吸啜窩が消えやすい「強いお口」になります。トレーニングは、毎日少しずつでも継続することが大切です。お子様が楽しく取り組めるよう、キャラクターのボタンを使うなど工夫してみてください。

【将来の投資】「0歳からの予防」vs「12歳からの矯正」のコスト比較

お子様の将来を想う親御様にとって、経済的な視点も無視できません。

項目A:赤ちゃんの頃から定期検診B:中学生になってから矯正
総費用(目安)数万円(数千円×年3回×15年)80万円 〜 150万円(矯正治療費)
身体への負担ほぼゼロ(クリーニングと遊び)抜歯、装置の痛み、数年間の通院
全身への影響鼻呼吸が定着し、風邪やアレルギーに強い口呼吸の影響がすでに全身に出ている可能性
最大のメリット自然に「綺麗な顔立ち」と「健康」が育つ無理やり歯を並べる必要がある

吸啜窩が残っているサインを見逃さず、離乳食期から適切なアプローチを行うことは、単なる節約以上の価値「健康な土台」をお子様にプレゼントすることなのです。

発達心理学の観点からも、乳幼児期は「口」が世界を知るための最も重要なセンサーである「口唇期」と呼ばれます。物をお口に入れるのは、単なる悪戯ではなく、感触や形を確かめて脳を発達させている証拠です。

この「何でもお口に入れる」探索行動は、お口の中への適度な刺激となり、舌や頬の複雑な動きを誘導します。安全性に配慮した上で、多様な質感のおもちゃを与え、お口を存分に使わせてあげることは、お口の機能を正常に成長させ、吸啜窩を卒業させるための「心の栄養」でもあるのです。

保護者の方からよくある質問(FAQ)

Q. 吸啜窩(きゅうてつか)が消えていないか不安です。自宅での見分け方はありますか?
A. 1歳半から2歳を過ぎて、上顎をのぞいた時に「ゴルフボールを一回り小さくしたようなへこみ」が中央にある場合は、吸啜窩が残っている(高口蓋)のサインです。また、反対に上あごが「尖った屋根のようなV字型」になっている場合も、あごが横に成長していない証拠です。歯科健診の際にぜひご相談ください。

Q. 指しゃぶりをやめさせようと無理に手を引っ張ると、逆効果になると聞きました。
A. はい、無理な強制は心理的なストレスとなり、かえって執着を強めてしまうことがあります。3歳までは温かく見守るのが基本ですが、指しゃぶりの代わりに「手を使う遊び(積み木、粘土、お絵描き)」に誘う、寝る時に手を繋いであげる、といった環境作りから始めてみましょう。歯並びへの影響が深刻な場合は、歯科医院で専用の装置(ハビットブレーカーなど)を検討することもあります。

Q. おしゃぶりを使っていますが、歯並びのために今すぐ辞めるべきですか?
A. 今すぐ断つ必要はありませんが、言葉が出始める1歳前後からは使用時間を減らすのが望ましいです。特に、おしゃぶりをしたまま長時間過ごすと、言葉の練習が阻害され、舌の動きも制限されます。「寝る時だけ」といったルール作りから始め、2歳頃の卒業を目指しましょう。

Q. 鼻詰まりがひどい場合、歯医者さんに行っても意味がありますか?
A. お口の問題(高口蓋・歯並び)と鼻の問題(鼻炎・アデノイド肥大)は相互に関係しています。当院では、お口の形状から耳鼻科での受診をお勧めすることもありますし、反対に鼻の治療と並行して、お口の筋肉を鍛えるトレーニング(MFT)を行うことで、相乗効果で症状が改善することもあります。まずは一度お越しください。

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まとめ:小児歯科クリニックは「お口の成長を見守るパートナー」

赤ちゃんの上顎にある「吸啜窩(きゅうてつか)」は、命を繋ぐための授乳の証であり、その後は「正しく噛めるようになった証」として消えていくものです。

もし、1歳を過ぎても深く残っているなら。離乳食がなかなか進まないなら。それは「お口の使い方がまだ上手くいっていないよ」という、お子様からの大切なメッセージかもしれません。

クスノセ歯科医院では、必要に応じて地域の耳鼻咽喉科や小児科とも連携を取りながら、多角的な視点でお子様の成長をサポートしています。「歯医者は歯を削るだけの場所」という古いイメージを捨て、お子様の「呼吸」と「健やかな発育」を守るためのベースキャンプとして、当院を活用してください。

親御様に寄り添い、お子様の無限の可能性を、お口の健康という側面から全力で支えることをお約束します。将来、「あの時クスノセ歯科で診てもらってよかった」と、お子様ご自身に言っていただける日が来ることを信じて、私たちは日々診療に取り組んでいます。

「まだ赤ちゃんだから早いかな?」と思わず、くぼみが気になったその時が、ベストな相談のタイミングです。尼崎の地で、皆様の大切な宝物であるお子様の笑顔に出会えることを、スタッフ一同、心より楽しみにお待ちしております。

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